昨日一日は色々あった。
やはり二人はジゴロだったのだ。
今日はもう6日目。明日はいよいよ帰国の日だ。
今日は特にすることはないのでお土産でもぶらっと見てのんびりすることにしよう。
散策に出かけるためホテルを出ると
キキとマリクは以前のようにホテルの出入り口で座って私達を待っていた。
「おはよ!」
と元気に声をかけると少し照れくさそうに
返事をくれた。
私達にはもう緊張も壁もなかった。
キキは折角だから・・・と
どこか行きたい所やしたいことはあるのか聞いてくれたが
特に何もない。
そこでキキが言う
「なにもないなら家に来てみる?何もないけど・・・すぐ近くだし、現地人の普通の生活見せてあげるよ。」
じゃぁ、家に遊びに行こう!
と行き先が決まった。
なんとホテルから歩いて10分。
裏道の裏を入って行くと、日常のバリの人たちの暮らしぶりが見えてくる。
ある敷地に入るとそこがキキの家だった。
コンクリート作りの一階建てのコンドミニアムが連なっているような。
洋風の簡単な長屋のような、そんなアパートの中の一室が彼の家だ。
敷地の広場では青年達が白熱して卓球をしている。
その数10人ほど。
日本語は話せないらしく、日本人の女の子を連れてきたキキに色々聞いている。
どうやらみんなジゴロで生活しているようだ。
キキの部屋へ行くと、本当に何もない1Rだった。
一階建てで誰でも出入りでき、窓やドアは開けっ放し。
プライベートはなく開放的だ。
のんびりしながら昼間の暑い時間を過ごす事にした。
話す話題は「ジゴロ」という仕事についてだ。
質問すると自慢するという風でも罪悪感をこめるでもなく、
これが普通で日常なのだという様子で答えてくれるキキ。
キキが入れてくれたアイスティーを飲みながらこんな話を取り留めなくした。
これはバリのジゴロの生声です
私:「日本語はジゴロになるために覚えたの?」
キキ:「うん。そう。大体声をかける担当が別れる。僕は日本語。他に英語担当、韓国語担当、中国語担 当とかあるよ。大体見ただけで国柄はわかるしね。」
そういえば町を歩いてるだけでコンニチワ~と話しかけられる。私もすぐに日本人だとわかるのだ。
私:「どうやってお金を稼ぐの?」
キキ:「そうだな、色々親切にして仲良くしていくうちに話の中で困った話とか、
生活の苦しい話をすると日本人の女性は優しいからこれよかったら使って。
ってお金をくれたり買ってくれたりする。」
私:「へー!今まで買ってもらった物ってたとえば?」
キキ:「この携帯電話。他にはアクセサリーとか服とか電化製品とか。いろいろだな~」
私:「今までで一番高かったものは?」
キキ:「車かな。」
にやっと笑う。
車か・・・何度も乗せてもらったあの車。日本人の女の子に買ってもらったのか・・・
なんだか複雑な心境だ。
私:「どんな人が買ってくれたりするの?」
キキ:「主に30代くらいの人で、仕事のリフレッシュに来る彼氏のいない人かな。
日本に帰ってからも電話くれたりするよ。
毎日位かけてくる人もいる。電話代はすべてその人が支払ってくれるし。」
ほほう・・・・そういえばたまに電話がかかってきていた
私:「もしかしてこのアパートも?」
キキ:「うん。生活費にって毎月送ってきてくれる人もいるからね。」
なんて生活にゆとりのあるOLがいるんだろう・・・
私:「そういう人は他にも女の子達と連絡してるって知ってるの?」
キキ:「まさか。知らないよ。僕とその子の二人同士の問題だしね。」
罪悪感は本当にないらしい。
自分の中できちんと順位があり、それぞれとは真面目に向き合ってる真面目なお付き合いなのだとか。
私:「奥さんは知ってるの?日本人の。」
キキ:「ううん。知らない。」
そうだろう。
知ってたら誰だって許さないもんね。
私:「どうやって知り合ったの?同じように旅行に来ているときに声かけたの?」
キキ:「うん。で、一緒に遊んでいるうちに、この娘しかいない!!って思って、
ずっとアプローチして結婚したの。」
私:「じゃぁ今は奥さんのことどう思ってるの?離れて暮らしてるんでしょ?」
キキ:「うん・・・だからすごく寂しい。妻のことは愛している。本当は一緒に暮らしたい。
でも日本人の女性は欲があるから質素な暮らしはなかなか出来ないみたい。
日本で働いてお金をためて、休みを取ってこっちにくるっていう生活をいましてるんだ。」
出稼ぎみたいなものだな。
確かに日本と同じ生活をここで求めるのは無理だ。
でもこんなに愛してるのに離れているなんて本当に寂しいだろうな・・・
(だからといってたくさんの女の子と遊んでいいことではないが。)
マリクのアパートも見せてくれた。
キキの住んでいるところから5分ほど離れたところだ。
まだ日本から帰国したばかりなのでスーツケースと少しの荷物があるだけだ。
「よかったら奥さん見てみたいな。写真あるの?」
と聞くとマリクは写真を探し出した。
なくしてしまったらしい。
1時間ほどかけて一生懸命探すマリク。
見かねて手伝って探すが・・・どこにもない。
毎日写真を見て私のことを待っててね。と奥さんに言われて大事にしていたらしい・・・
泣きそうな顔で探しているのをみると、本当に奥さんが好きなんだなとわかる。
するとマリクは、
「来週奥さんここに来るの。そのとき写真を飾ってなかったら離婚するって言われてるんだ!!
どうしよう!」
おいおい・・・どうしてそんな大事なものをなくすのかなぁ・・・
パニックになってる時は出てきにくいもの。
マリクは夜に落ち着いて探すことにした。
部屋を出てキキの部屋へ戻ろうとしたとき、後ろから中年の女性の大きな声がした。
なにかを叫んでいる。
インドネシア語なので私に意味はわからなかったが後でマリクに聞くと
「奥さん悲しむからもう女の子遊びはやめなさい!!」
と叱られたのだそう。
やはり奥さんを大事にするのは当たり前のことなのだ。
のんびりして暑さをしのぎ、2人の生活をみて、私達はバリでの最後の一日を終えた。
明日はいよいよ帰国の日だ。
ただのんびりエステをして海で遊ぼうと思っていたバリ旅行は
思わず深く、色んな表情を楽しむことが出来た。
私達は明日帰ればまた日本での日常が待っている。
でも彼らはこれが仕事で、また違う女の子と旅を楽しませて生活していくのだろう。
「現地人」自分たちのことを、よくこう言っていた2人は実はバリの人ではない。
聞けば、出身はジャワ島。
ジャワ島は農業中心で生活は大変貧しいという。
インドネシアの中で際立ってお金を稼げるバリ島。
ここにお金や仕事を求めてやってくる若者は大変多く、彼らもその為にここに来たのだ。
必死に語学を勉強して、物価のまるで違う裕福な国の旅行者達を案内して仲良くする。
最終的に結婚してこの国を出たい。他の国も見てみたい。と夢見て。
だけど、その夢を実現させて日本で働いたマリクは、日本の社会になじめず孤独感を募らせて
またバリに戻ってきている。
一概にジゴロがいいとは言わないけれど、
日本の日常に疲れて異国の地で異国の男性に惹かれて、
その人の幸せを願ってお金をあげて自分も幸せを感じる、
そんな生活に少しゆとりのある女性と
それをわかって一生懸命サービスするバリ人ジゴロとの関係も、
・・・ありなのかなと思ってしまう。
次の日
最後まで面倒見るの言葉通り、
キキとマリクは空港まで送ってくれて時間になるまでずっとそばにいてくれた。
「またバリに来てね。 いつもこの別れのときは寂しくてたまらない。」
とキキが言う。
「またくるね!」と
私達は握手をしあう。
が、キキは悲しそうに言う
「みんな絶対にまたくるね。といって、絶対こない。
だからまた来るという言葉は信じられない。
きっとこれでお別れになるんだよね。そう思うと、寂しくてたまらないよ。」
ぐっと来る言葉だ。
私達はまた小金をためて海外へ旅行することはそんなにハードルの高い夢ではない。
でも彼らにとって遊びで海外へ行くということは一生をかけるほど莫大な金銭を伴うものなのだ。
だから、旅先で出会った異国の人を想っても、待つしかないのだ。

アナウンスがかかり、飛行機に乗り込む。
機内では色んなことを思い出しながらまたバリへ来たいと強く想った。
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